冥王

はじめに

今月で志田は
Revoさんの音楽と出会って2年になる

2歳の人間というのは
「赤ちゃん」から「子ども」へと成長する
走ったり、跳ねたり
スプーンやフォークを使ってご飯を食べたり
積み木やお絵描きができるようになる

「これ、ちょうだい」など
ニ語文を話せるようになる

そして、おトイレに行けるようになる

一方で、
この地平の辺境に墜落して2歳を迎える志田は
コンサートへ走り
ローランの黒さにビビって跳ねる

飯は食う

CDケースを破壊せず
分解することができるようになった

お絵描きはできない

「れぼ、くろい」や「ぐらさん、わりたい」など
ニ語文を話せるようになった

しかし、感情の排泄はままならず
言語化というおむつ交換が欠かせないのである

 犬で言うと
24歳になっているというのに、、、

しかし

この出会いこそが私の世界を広げ
私の耳に優しい歌を添えるのである

偉大なる音楽家
並びに御関係者様
ローラン方に

こころからのkissを

さて、もう一つ

志田が寂れた公園の池を周回していると
とある数人の賢者ローランに黄昏の如き金言を賜った

皆口を揃えて「Moiraは全て通して聴くべし」と仰るのだ

ここで、その理由を黙するところが
賢者ローランの賢者たらしめる

とりあえず

志田は「一曲ごとに止めて、何度も繰り返し
幻想が固まってから次の曲を聴く」
という方法を一時的に廃することにした

今回は
「メモを取りながらアルバムを通して拝聴し
その後、メモを頼りに各曲について
何度も繰り返し聴くことによって幻想を深めていく」ことにした

真の意味で初聴ではなくなってしまうのかもしれないが
正しく、志田の初めて なのである

真の意味で初めて1回、通して聴いてみる

たまげた

文学の部分(詩・台詞・ナレーション)

物語がわかりやすい、、、、のでまた終盤に書くことにして


運命に翻弄される双子を軸として
その周辺の物語が描かれるのではなく

歴史あるいは物語を構成する要素として必要な人物達が
時の縦糸に織られていくようであった
面白い

なんと、群像劇

今までは
中心となる人物に関する複数の物語を集めて
一つの大きな物語が作られている印象があったが

群像劇

といっても主人公を一人に絞らず
曲ごとに違う人物に焦点を当てる というよりは

一つの大きな物語(または歴史)に
人物やその物語を集めて作っている ところが

面白いと感じた

そして、賢者ローランに心から感謝

なるほど、やってくれましたな

時系列は縦糸によって飛躍すれども
順序が入れ替わったりしない
時間が巻き戻る時は
しっかりそのきっかけが描写される

基本的には「一方その頃」のように
並列して描く

色んな糸が絡んで布になった
この布をなんと呼ぼうか ではなく

神は布を作ろうと あるいは作りたい布があって
縦糸に必要な横糸を編んだ

まずひとつの物語または歴史があって
それを織り上げるのに必要な人物やその物語が
縦糸に絡まれていく

志田はRevo音楽のこれが聴いてみたかった

登場人物の内面を映す空模様
全体的に叙情的で美しい言葉の数々

所々、少し古風なニュアンスを含みながら
竪琴を片手に詩が詠まれた幻想古代ギリシャが
瞼の裏にそれはそれは色鮮やかに蘇る

人名や土地の名前は具体的だが
他は耳馴染みよく抽象的であるのが
より一層、詩的で美しく聴こえる

日本語のナレーションが一切無いのも良い

志田が英弱であるからパッと聴いただけでは
理解できない所為なのかもしれないが
アルバムが始まってから終わるまで
一度も私を幻想古代ギリシャから引き戻さない

そもそも志田はずっと、モイラだと思っていた、、、、、

音楽

ある種の絶頂があった と書くしかない

美しい、、、いや
美しいのは間違いないのだけれど
気持ちよすぎる がしっくりくる


人間が気持ちよいと感じる音楽
いや、音のツボを全て同時に押される

結果として脳内で
過剰にドーパミンが出て快楽を得ている


この旋律はこう閉じると心地よいでしょう?
ここでトランペットが吠えれば身震いがするでしょう?

そうして最終的には
この音の次はこの音がいいでしょう?
を永遠に聴かされている気がした

このように書くと
人間の欲求だけを満たす音楽のように陳腐なものに聞こえてしまうから
どうしようもない

この美しさをいかに書くかで挽回することにする


とにかく志田は
脳汁がいっぱい出た
砂糖水も甘くなくなってしまった、、、

そして、この心震わす旋律に依存してしまうのではないかと
こんな音楽を聴いてしまったら
どうにかってしまいそうで
怖くなるくらいメロディが美しすぎたのだ


激ヤバメロディと激ヤバ間奏の数々、、、、、、、
キャッチーなメロディーメーカー なんて言葉では
讃えられない、、、、

真面目に書くとすれば

いくつかのテーマとなる旋律が何度も登場し、言葉なき語りとして描写をリフレインする

他のアルバムでもよくあるけれど特にMoiraは効果的に使われていたように感じた

好き

そして、弦楽器が印象的
特に、竪琴を思わせるハープの調べは
物語と物語を
時と時を接続し
紡がれた縦糸を奏でるようであった

夜明けとともに遺跡が蘇り
雷鳴とともに国運に黒雲がかかる
人物の心情と空模様を重ねるなど
詩が叙情的で美しいだけでなく
事象を情景に重ねて表現される音楽が
志田が拝聴してきた音楽より多かった気がする

また、神の音楽を作ってしまったなRevo


冥王

以下、通しで聴いたメモを元に
初めての衝動はそのままに、、、、、
何度も繰り返して書いた感想です


イントロ

パイプオルガンの重厚な和音が繰り返される
その間隔が早くなるわけでも、高くなっていくわけでも無いのに
大きな迫ってくるよう でも不動
多分聴く者が近づいていく

銅鑼的なものが鳴ると
どっしりとした開かずの扉がバンッと開かれる
どんよりと混ざる重い和音の上に
テーマのメロディが載る

なるほど、だからパイプオルガンなのか
建造物ほどもある巨体から奏でられる音色は重く
油絵の具をべたりとカンバスに塗りつけるような圧がある
かと言って、旋律は色がなく、湿気ていて、広い地下空間を思わせる
パイプオルガンというだけで 屋外ではない
ここが閉鎖されていて
天井の高い広い空間であることがわかる

大きな太鼓系の音はテーマに対して
少し前のめりなリズムを刻んでいる
階段を一段ずつ降りて、空けた扉が背後で勢いよく閉まるように
どんどん前へ押し出してくる
儀式のような、崇拝のような混声の
コーラスによってテーマが完成し、一瞬無音になる
その瞬間に数多いるコーラス一人ひとりが、こっちを見ていて
その目と目があって群衆の総意みたいな圧を受ける

Ah ah ah...

松明の爆ぜる音と女性の二重唱 ここ好きだ
種族は同じでも、群衆と比べて魔力が強いために
喋れるタイプの側近二人が
松明を持ってボスの部屋の前に立っている

「冥王様の御出座〜」というより
冥王様は、多分パイプオルガン如くデカくて
ほぼ建造物なので、こちらが御目通り願うしか無い
みたいな、存在の不動

シンプルで美しいメロディだな
高低どちらも主旋律のようにハリがある
「冥王様の御前だ」と、襟を正される旋律

より一層重厚で豪奢な扉が開かれる

冥王、あんた結構ロックな奴だな

lalala...

いや!違う
歌い方はなんというか

ねっとりとして陰気だ
なんだこれは

ソウ、我コソガ死ダ


我こそも、志田

小刻みなストリングスに
打ち付けるようなドラムで結構過激なロック
冥王様本人の印象と食い違う

歌い方はねっとりしていると言えばいいのか
体に最大限響かせて低音を出力し
体格の大きさを表現していると言えばいいのか、、、、、

ねっとり陰気なドデカ冥王様かもしれないが
ずっと一定の低い温度で感情が乗らない

生キトシ生ケル全テヲ 殺メ続ケルコトデ 奪イ続ケヨウ

生きとし生けるものに平等に与えられる死
冥王様はみんなのもの

おしゃれジャズパート


降る雨が地上を攫い浸透し
鍾乳石から滴るピアノの雫が
その下の石灰華段の水面に落ちて
ギターの一音を揺らす
チョロチョロと地下水が流れる音も聴こえる

lalala... 貴方ハ 唯 逝ッタノダ

冥王様の鼻歌と
小気味良いドラムのステップと
その足取りのウォーキングベース

冥王様の御日課♪

冥王様は池の淵をぶらぶらと、お付きの二人を侍り、御歩きになっていらっしゃいます。やがて冥王様はその池のふちにお佇みになって、水の面の揺れる隙間から、ふと中の様子を御覧になりました。この冥府の池の水は、丁度地上から滲み落ちた雫が溜まって居りますから、水晶のような水を透き徹して、現世の川や山の景色が丁度のぞき眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございましょう。

不運な姫君

冥王様が水面に見た
不運な姫君と血濡れた花嫁と
死を抱く瞳の彼と殺められた母
御見初めの四名のお迎えが決定

冥王様は現世ではなく
未来?を覗いていたのかもしれない

そして激しいロック!

冥王様の背中に、楽器隊一同拍手喝采のソロ

盛り上がっていく五拍子
登り切ったところをキョロキョロと繰り返す
この四人は冥王様にとって特別なのか?
運命の人なのか?

ベースのソロは「ちょっと待て待て」で
他の楽器がおしだまる
リスナーにに漸く呼吸をする間が与えられるが
沸々と湧き上がってくる期待

冥王様の巨大な背中に視線が集まる

彼が振り返るまで
歓びか 哀しみか どっちか分からない
対になる短い旋律を繰り返す
右が左かを問うようなメロディと
どっちだ?と子分たちがその答えを今か今かと待ち望む前のめりなシンコペーションのリズム

ババン ババンと2回押して
冥王様の背中にフォーカスを寄せて
子分たちの期待がリスナーを巻き込んで
最高潮になると
ふっと一瞬無音になる

ここで平等な我の愛Death「冥府へようこそのテーマ」と共に
誰かの走馬灯が駆け巡る、、、、、、、

冥王さまの不動の背中に
寂しさを見てしまうよ

冥王様は死を以て平等に愛すかぁ

冥王様はお仕事をしたまででらっしゃいます
この無表情に、我々が勝手に歓びや哀しみを描いてしまうのです

性別、年齢や身分、生死に関わらず
冥王様は等しい寵愛をお与えになる

万人等しく水底に姿を見るのか
いやこの四人だけなのか、、、、

この展開の素晴らしさよ
グラサンが目に痛いぜ

これには冥王様も大絶叫である

え?

え?、、、は

え?冥王様だよね、、、?

え?どうした急に

もう何もわかんない

韻踏んでる場合じゃない

怖いよ

グラサンが怖いよ

ずっと地下に篭ってたら
冥王様も具合悪くなるよね、、、
そういう時あるよね

顔白い奴、漏れなく具合悪いから

、、、、陽の光に当たって
冥王様が消滅する断末魔だったらどうしよう

居た堪れない

なんでこんなに
生白い顔した地下生生物ばっかりなんだ
あの人、軟白栽培農家なのかな

冥王様の懐

「みんな愛してるぜ」って台詞は
愛を受けた人からしか聴いたことがない
愛されないと、愛し方が分からないから
愛情は誰かからもらわないと、誰にも渡せない

冥王様は誰から愛されて
冥王様は人間のなにを愛してくれているのだろう

母君に愛されて
無慈悲に見捨てられたのかも知れない

この冥王様の愛は博愛ではなくて、哀れみか

冥王様にとって生物は
女神に不平等に生を与えられ、時に苦痛を孕み、運命に弄ばれるだけの存在
女神に見捨てられた生物たちが
等しくみな自分の元へ来るのが憐れでかわいいのかもしれない

冥王様自身も女神に捨てられたと思っている、、、?
という同情、、、、というか 憎しみの裏返し、、、
愛されなかった自分が、万物を愛そうとすることで
自分自身を救済するような

或いは、母が子に無償の愛を注ぐように
彼は生きとし生けるものに
無償の愛を注ごうとしているのかもしれないが
子が母に注ぐ愛こそ無償なのかもしれない

本当は何もかも忘れて誰かの懐で眠りたい

彼が誰もを愛するように
誰かに誰よりも愛してほしかった

そこに74億kmの寂しさを感じてしまう



死ぬと魂は勝手に冥王様の元へいくのか
冥王様が迎えにいくから死ぬのか

どっちなんだろうか

この曲だと冥王様は不動のイメージがあるけど
目をつけた者達には
冥王様御自ら、お迎えに上がるのか

でも、お迎えに行く時は「ようこそ」とは言わない
実家の玄関マットにwelcomeって書いてあるように
死者が冥府を訪ねてきた時こそ「ようこそ」であるなら

冥王様は動かない

もしくは、業務委託


余談:New Horizons


夜空を仰いでも、遠い闇の底に見えることはない
かつて「惑星X」と呼ばれたその星は
クライド・トンボーによる発見後も
長らく誰の訪れも知らぬまま、太陽系の果てに静かに漂っていた

人類は、月を踏み、火星を探り、木星や土星の環を間近に眺めてきた
それでも冥王星だけは、まだ誰も触れたことのない最後の空白
太陽系の物語を埋める最後の一行であった

2006年の冬
一機の小さな探査機 New Horizons が
打ち上げロケット アトラスV に載せられ地球を旅立った

「新しい地平」という名の背に
探査機器の他に
星条旗や43万人の名を記録したCD-ROM
史上初の民間宇宙船「スペースシップワン」の機体の破片
冥王星を発見したクライド・トンボーの遺灰を載せて
太陽の光も届かない太陽系外縁のはるか数十億キロの闇へと
漕ぎ出したのである

だが、その旅の途上で、冥王星は「惑星」の座から降ろされた
第九惑星の名を奪われ、「準惑星」となったのである

やがて9年半の航海を経て
New Horizonsは冥王星に辿り着く

2015年7月

氷の大地の中に、その小さな目は
窒素の雪が降り積もったスプトーニク平原は冥王の心を映す
遠い星から訪ねてきた旅人に
「ようこそ」と応えたのだろうか

冥王星に見送られ
New Horizonsは今も飛び続ける

やがて太陽の光も届かぬ闇を越え
何百万年、何千万年という時をさまよう果てに
冥王の懐に抱かれるのだろうか

「ヨゥコソ」

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